命題と論理
論理はやっぱ大切。 なので、復習がてらまとめる。
命題(Proposition)の定義
論理的に正しいか正しくないか(間違い)を判定可能な叙述のこと。
正しいか正しくないかの表現方法
命題論理における正しさと間違いの表現方法。
- | 正 | 誤 |
---|---|---|
論理学 | True/T/真 | False/F/偽 |
ブール代数 | 単位元1 | 零元0 |
アリストテレスの思考の3法則
思考(論理)の公理的な法則1としては次の3つの法則がある。
原則 | 説明 | 論理式 |
---|---|---|
同一律 (identity) | 「何であれ、ある事物Aは同じ事物Aである」こと | For all A, A = A. |
無矛盾律 (non-contradiction) | 「ある事物について同じ観点でかつ同時に、それを肯定しつつ否定することはできない」こと。2 | ¬(A∧¬A) = T. |
排中律 (excluded middle) | 「命題は成立するか成立しないかのどちらか以外は起こらない」こと。 | ¬¬(A∨¬A) = T. |
論理演算の5つの演算子
命題論理とブール代数は代数的構造が同じになる。3
演算子 | 命題論理 | ブール代数 | 集合 |
---|---|---|---|
否定 | ¬ | x̅ | 全体集合の補集合 |
または | + | ∨ | 和集合 |
かつ | ・ | ∧ | 積集合 |
ならば | ⇒ | ⇒ | 部分集合 |
同値 | ⇔ | = | 全単射 |
命題論理における真理値表
それらの命題論理の演算子を使ったの計算結果の例。
P | Q | ¬P | ¬¬P | P ∧ Q | P ∨ Q | P ⇒ Q | Q ⇒ P | P ⇔ Q |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
T | T | F | T | T | T | T | T | T |
T | F | F | T | F | T | F | T | F |
F | T | T | F | F | T | T | F | F |
F | F | T | F | F | F | T | T | T |
ブール代数の性質
公式 | 例 |
---|---|
可換則 | A · B = B · A A + B = B + A |
結合則 | A · (B · A) = (A · B) · C A + (B + C) = (A + B) + C |
吸収則 | A · (A + B) = A A + (A · B) = A |
分配則 | A · (A + B) = A · B + A · C A + (B · C) = (A + B) · (A + C) |
相補則 | A · A' = 0 A + A' = 1 1' = 0 0' = 1 |
同一則 | A + 0 = A A + 1 = 1 A * 1 = A A * 0 = 0 |
べき等則 | A · A = A A + A = A |
二重否定則 | (A')' = A |
ド・モルガンの法則 | (A + B)' = A' · B' (A · B)' = A' + B' |
3つの推論方法
推論とは,いくつかの命題を根拠にして,1 つの命題を導き出すこと。代表的に次の3つが使われる。
式 | 説明 |
---|---|
否定式 | P ⇒ Q という事実と ~Q という事実から,~P という事実を導き出す推論方 |
肯定式 | P ⇒ Q という事実と P という事実から,Q という事実を導き出す推論方法 |
三段論法 | P ⇒ Q という事実と Q ⇒ R という事実から,P ⇒ R という事実を導き出す推論方法 |
命題論理 vs. 述語論理
論理 | 意味 | 例 |
---|---|---|
命題論理 | リテラルのみを使用する論理のこと | nが偶数 => n+2は偶数 |
述語論理 | 量子化や述語(関数)を使用する論理のこと | ∀n∈ℕ: even(n) ⇒ even(n+2) |
2つの量子化
演算子 | 使い方 | 意味 | 確率 | 主張 |
---|---|---|---|---|
全称量化子 | (∀x) P(x) | すべてのxに対してPである | 100% | ある |
特称量化子 | (∃x) P(x) | あるxに対してPである | not 0% | 少なくとも一つはある |
間違えやすいモノ
論理包含の同値は対偶
- ある命題論理「東京に住んでいるならば日本に住んでいる」の同値は、
- 「日本に住んでいないならば東京に住んでいない」になる。
P | Q | ¬Q ⇒ ¬P | 住所の例 |
---|---|---|---|
T | T | T | 日本に住んでいない => 東京に住んでいない |
T | F | F | 日本に住んでいる => 東京に住んでいない |
F | T | T (vacuous truth) | 日本に住んでいない => 東京に住んでいる |
F | F | T (vacuous truth) | 日本に住んでいる => 東京に住んでいる |
論理包含の否定は論理積を使う
- よくある勘違いが論理包含の否定パターン。
- 「AならばB」の否定を「AでないならばB」、あるいは「AならばBでない」と考えてしまうのは正しくない。
- 「AならばB」の否定は、「AではあるがBではない」、つまり「AかつBでない」。
- 例で言えば、「東京に住んでいるかつ日本に住んでいない」となる。
- 前提条件を満たしているが結論を満たしていないということが、「AならばB」の否定となるといこと。
P | Q | P ∧ ¬Q | 住所の例 |
---|---|---|---|
T | T | F | 東京に住んでいる ∧ 日本に住んでいない |
T | F | T | 東京に住んでいる ∧ 日本に住んでいる |
F | T | F | 東京に住んでいない ∧ 日本に住んでいない |
F | F | F | 東京に住んでいない ∧ 日本に住んでいる |
論理包含のvacuous truth
- 論理包含では、前件がFalseの場合は命題論理は意味をなさない。
- 例: 「東京に住んでいない => 日本に住んでいる」は意味が通じない
- なぜその場合にTrueになる(vacuous truth)かというと、計算上都合がいいから。
- なぜなら、論理積による否定のさらに否定(~(P ∧ ¬Q))が論理包含と同値になるため
P | Q | P ⇒ Q | 住所の例 |
---|---|---|---|
T | T | T | 東京に住んでいる => 日本に住んでいる |
T | F | F | 東京に住んでいる => 日本に住んでいない |
F | T | T (vacuous truth) | 東京に住んでいない => 日本に住んでいる |
F | F | T (vacuous truth) | 東京に住んでいない => 日本に住んでいない |
トートロジーと同値の違い
- 一般的に使われる言語のトートロジーはBoys will be boysみたいな反復または言い換え。4
- だが、論理学のトートロジーは常にTrueになることなので注意。
用語 | 意味 |
---|---|
Tautology | 常にTrueの式のこと5 例: (P ⇔ Q) ∨ (Q ⇔ P) |
Equivalent | 2つの式が同じ値であること |
トートロジーの例
P | Q | P ⇒ Q | Q ⇒ P | (P ⇔ Q) ∨ (Q ⇔ P) |
---|---|---|---|---|
T | T | T | T | T |
T | F | F | T | T |
F | T | T | F | T |
F | F | T | T | T |
推論の2つのパターン
パターン|説明| ---|---|--- 演繹(deduction)|一般的かつ普遍的な事実を前提とし、そこから結論を導きだす方法|((A ⇒ B) ∧ A) => B 帰納(induction)|さまざまな事実や事例から導き出される傾向をまとめあげ、結論につなげる方法|枚挙的帰納法、アナロジー(類推)、アブダクション(仮説形成)
充足可能性問題(SAT問題)
- 「一つの命題論理式が与えられたとき、それに含まれる変数の値を偽(False)あるいは真(True)にうまく定めることによって全体の値を'真'にできるか?」という問題
- 例: (x ∨ y) ∧ (x ∨ ¬y) ∧ (x ∨ ¬y)
- x=T, y=Fで全体としてTにできるので、Yes
- この問題はNP完全問題として知られている。
ちなみに、ある問題XがNP完全問題であることは一般に次のように求める6。
- 問題XがNPに属することを示す。
- NP完全であることが既知の問題Aを、多項式時間で問題Xに変換可能であることを示す。
- 以上より、XはAと同等かそれより難しい。しかし、NP完全問題はNPの中で一番難しい問題なので、XはAと同じくNP完全問題である。
普遍的な論理表現の例
日常生活で役に立つ普遍的な命題論理。
- 自分ができること ∧ 他人が求めていること = 提供できる価値
- 因果関係がある ⇒ 相関関係がある
19の誤謬のパターン
オンラインブック7がわかりやすい。
Law of thought https://en.wikipedia.org/wiki/Law_of_thought 5: Truth Tables, Tautologies, and Logical Equivalences https://sites.millersville.edu/bikenaga/math-proof/truth-tables/truth-tables.html 4: Tautology (language) https://en.wikipedia.org/wiki/Tautology_(language) 2: 無矛盾律 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%A1%E7%9F%9B%E7%9B%BE%E5%BE%8B 3: 記号論理学 https://www.sist.ac.jp/~suganuma/kougi/other_lecture/SE/math/logic/logic.htm 7: Bad Arguments https://bookofbadarguments.com/jp/ 8: Bad Arguments https://bookofbadarguments.com/jp/ 6: 大人になってからの再学習 http://zellij.hatenablog.com/entry/20131019/p1